2004年に発売され、今なお続く壮大な「軌跡シリーズ」の幕開けとなったRPG『英雄伝説 空の軌跡FC』。 それから20年以上の時を経て、グラフィック、システム、演出のすべてを一新したフルリメイク作品『英雄伝説 空の軌跡 the 1st』がついに発売されました。
「あの名作がどう変わったのか?」 「思い出補正を超えられているのか?」
今回は、シリーズファンである私たちが、実際にエンディングまで遊んだ感想を本音でレビューしていきます。


『英雄伝説 空の軌跡 the 1st』の基本情報
| ジャンル | ストーリーRPG |
| 開発元 | 日本ファルコム |
| 発売日 | 2025年9月19日 |
| 機種 | Switch Switch2 PS5 PC |
| プレイ人数 | 1人 |
| おすすめ度 | 4 |
『英雄伝説 空の軌跡 the 1st』は、日本ファルコムの人気RPG「軌跡シリーズ」の記念すべき第1作目(空の軌跡FC)を、グラフィック・システム共に1から作り直したフルリメイク作品です。
当時の見下ろし型視点から、臨場感あふれるフル3Dへと劇的に進化。 アクション要素を取り入れた新戦闘システムや、フィールド探索のシームレス化など、現代の技術で名作が鮮やかに蘇ります。
シリーズ未経験の方には「最高の入門作」として、当時のファンには「思い出以上の感動」を与えてくれる一作です。


ストーリー(あらすじ)
遊撃士(ブレイサー)。
それは民間人の安全と地域の平和を守ることを第一の目的とし、 魔獣退治・犯罪防止に従事する者たちのことである。
特定の国家に帰属することなく中立的な立場から活動する遊撃士は、 幼い子どもたちの憧れの職業でもあった。
リベール王国ロレントの街近くに暮らし、 遊撃士の父を持つ少女エステルもまた、 遊撃士への憧れからその道を志した者のひとり。
彼女は姉弟同然に育ってきたヨシュアとともに 遊撃士を目指して修行に明け暮れていた。
そんなある日、エステルの父カシウスのもとに一通の手紙が届く。
手紙を読んだカシウスは急用ができたと言って エステルとヨシュアのふたりを置いて旅立ってしまう。
遊撃士の見習い、《準遊撃士》になっていたふたりは、 カシウスが引き受けるはずだった仕事を代わりに引き受けることになり――
遊撃士としての第一歩を踏みだすのだった。
引用:公式ホームページ
グラフィックの完全3D化
オリジナル版の「2Dドット絵+固定視点」から、キャラクターもマップも全てを1から作り直したフル3Dグラフィックに進化しました。
最新のゲームエンジンを使いつつも、フォトリアル(実写風)ではなく、当時のイラストの雰囲気を崩さない「温かみのあるアニメ調」のビジュアルで統一されています。
カメラも360度自由に操作できるようになり、リベール王国の美しい風景を隅々まで見渡すことが可能です。
フィールド探索とシームレスな移動
引用:公式ホームページ
プレイしていて感動したポイント。街やダンジョン、フィールドマップがシームレスに繋がり、ロード時間を挟むことなく快適に移動できるようになりました。
画面切り替えのストレスがなくなったことで、広大なリベール王国を「自分の足で冒険している」という没入感が格段にアップしています。
また、一度訪れた場所へ瞬時に移動できる「ファストトラベル」機能も標準搭載されており、広大な世界の移動もストレスフリーです。
フィールドバトル×コマンドバトルの融合
本作では『黎の軌跡』のシステムをベースに、シリーズ伝統の「コマンドバトル」と、フィールド上で敵を直接攻撃する「アクション要素」が融合しています。 プレイヤーは状況に応じて、スピーディーなフィールド攻撃と、戦略的なコマンドバトルを自由に使い分けることが可能です。
クイックバトル
フィールドを徘徊する敵シンボルに対して、直接アクションを行うパートです。
攻撃アクションは、隙の少ない「通常攻撃」だけでなく、キャラ固有の強力な「クラフト(戦技)」も使用可能。 これらを駆使して敵を「気絶(スタン)」させれば、敵が弱体化した有利な状態でコマンドバトルに突入できます。
また、自分よりレベルの低い格下の敵であれば、コマンドバトルに移行せず、フィールド上の攻撃だけでサクサク倒して経験値を得ることも可能です。
コマンドバトル
行動順(ATバー)を見ながら戦う、シリーズおなじみの王道コマンドバトルです。
属性相性を考えた「アーツ(魔法)」や、キャラクター固有の技「クラフト」を駆使して戦います。
リメイク版ではバトルのテンポが劇的に向上しており、戦局を覆す必殺技「Sクラフト」も、フル3Dによる大迫力の演出で繰り出されます。
評価点・面白かったところ
それでは実際に「英雄伝説 空の軌跡 the 1st」遊んでみて面白いと感じたところから紹介したいと思います。
アニメ調「3Dグラフィック」の完成形!シナリオ・バトルともに没入感を高める
本作のグラフィックは、近年のリアル志向なゲームとは一線を画す、非常に「温かみのある3D」に仕上がっています。
リアルすぎないグラフィックのおかげで、まるで「動かせるアニメ」の世界に入り込んだような感覚を味わえます。
「空の軌跡」という作品の世界観を表現するうえで、アニメ調3Dグラフィックの完成形と言っても良いのではないかと感じました。
生き生きと動くキャラクターがシナリオを盛り上げる
特に注目したいのは、キャラクターの動きにあえてモーションキャプチャーを使用していないという点です。
現実の人間や物体の動きをセンサーで記録し、CGキャラクターに反映させる技術のこと。リアルな挙動を再現できる。昨今のメジャータイトルはほぼこのシステムを採用している
人間のリアルな動きをそのまま取り込むのではなく、アニメーターの手付けによって動きを作ることで、「イラストがそのまま動いているような感覚」が見事に表現していると感じました。
このこだわりのおかげで、コミカルなシーンはより楽しく、シリアスなシーンはよりドラマチックに演出され、物語への没入感が格段に深まっていました。
キャラクターの「クラフト」演出もカッコよい!
戦闘中の技(クラフト)の演出も、3D化の恩恵を最大限に受けています。
オリジナル版のドット絵の良さを残しつつ、3Dならではのダイナミックなカメラワークが加わったことで、爽快感が倍増しました。
特に必殺技である「Sクラフト」のカットインから技発動への流れは圧巻で、何度見ても飽きないカッコよさがあります。


色褪せない名作!「エステル」「ヨシュア」の絆を育む旅
本作の最大の魅力は、主人公であるエステルと、その義弟ヨシュアが織りなす「等身大の成長物語」にあります。
太陽のように明るく、誰からも愛されるエステル。 冷静沈着で優秀ながら、どこか影のあるヨシュア。
対照的な二人が「遊撃士(ブレイサー)」としてリベール王国全土を旅し、多くの人々と関わる中で、単なる姉弟以上の「絆」を少しずつ育んでいく過程が丁寧に描かれます。
旅の終盤で明らかになる真実は、これまでの旅の積み重ねがあるからこそ、涙なしには見られない感動的な演出になっています。
王道の冒険活劇でありながら、繊細な心理描写が胸を打つ、まさに「色褪せない名作」の名にふさわしいシナリオです。


街の住人まで「生きている」!異常なまでの世界観の作り込み
「軌跡シリーズ」の代名詞とも言えるのが、「モブキャラクター(NPC)の異常な作り込み」です。
街ですれ違う人々には全員に名前があり、それぞれの生活や人間関係が設定されています。
驚くべきは、メインストーリーが少し進むたびに、街の住人全員のセリフが更新される徹底ぶり。「あの二人の恋の行方は?」「あの商人の商売はどうなった?」といった、メインストーリーとは無関係な「名もなき人々のドラマ」が同時進行で描かれ続けます。
彼らがただの背景ではなく、確かにそこで生活していると感じられるからこそ、この世界への「没入感」が他のRPGの追随を許さないものになっています。


快適性!ファストトラベル・クエストマーカー・倍速機能で過去の名作が遊びやすくなった
昔のゲーム特有の「不便さ」は徹底的に排除され、現代の基準に合わせて遊びやすくなりました。
一度行った場所へ瞬時に飛べる「ファストトラベル」や、次に行くべき場所やイベント発生地点を示す「クエストマーカー」を完備。
さらに、ワンボタンでバトルや移動速度を高速化できる「倍速機能(ハイスピードモード)」も標準搭載されました。
「ストーリーは気になるけど時間はかけたくない」という忙しい現代人でも、ストレスゼロでサクサク遊べる設計になっています。


名曲がフルアレンジ!BGMとフルボイスによる没入感
※通常戦闘曲
「英雄伝説 空の軌跡」といえば、BGMの評価が非常に高いことでも有名ですが、本作ではそれらが全曲フルアレンジで蘇りました。
原曲のメロディラインを大切にしつつ、より豪華で厚みのあるサウンドに生まれ変わっており、懐かしくも新しい感動を呼び起こします。
さらに、メインストーリーは豪華声優陣によるフルボイス仕様となり、キャラクターの感情表現がよりダイレクトに伝わってくるようになりました。
クライマックスシーンは、音楽と演技の相乗効果で、プレイヤーの心を深く揺さぶる素晴らしい演出となっています。


問題点・悪かったところ
続いて、実際にプレイして気になった点について触れていきたいと思います。
物語はあくまで「序章」…。この作品だけでは完結しない
本作はタイトルに「the 1st」とある通り、壮大な「空の軌跡」という物語の「前編(FC)」にあたる作品です。
一本のRPGとして十分なボリュームはありますが、全体を通してみると「キャラクターや世界観の紹介」という側面が強いため、一本の作品として見ると、やや物足りなさを感じるかもしれません。
特にエンディングは、物語が大きく動き出した瞬間に幕を閉じるため、人によっては消化不良に感じてしまうと思います。
ただ個人的には、続編である「SC」まで遊んでこそ、「空の軌跡」という名作が真に完成すると考えています。
本作「前半」があるからこそ、「後半(SC)」が引き立つシナリオ構成になっているので、ぜひ2作合わせてプレイしてほしいです。


フィールドバトルがつまらない。冗長になる
『黎の軌跡』から採用された「フィールドバトル」と「コマンドバトル」を融合させたシステムですが、個人的には噛み合わせは良くないと思っています。
「瞬時に切り替えられる」と言えば聞こえは良いですが、有利に戦うためには「フィールドで敵を気絶(スタン)させてから、コマンドバトルに移行する」という手順がほぼ必須になります。
雑魚敵と出会うたびにこの「フィールドバトル→スタン→コマンド」のルーチンを繰り返すことになるため、テンポが良いというよりは、「ひと手間増えて面倒になった」という印象です。
また、「フィールドバトルで○体倒せ」という実績報酬で強力なアイテムが設定されているため、無視したくてもやらざるを得ない作りになっているのがこの問題を助長されています。
肝心のアクション部分も「通常攻撃・クラフト・回避」のみと単調です。 同社の「イース」シリーズのような爽快なアクションがあれば別ですが、中途半端なアクション性は、かえってバトルの作業感を強める要因になっていると感じました。


敵が固いだけのゲームバランス
戦闘バランスについては、全体的に敵のHPが不必要に高く設定されている印象を受けました。
こちらの攻撃力が低い序盤から中盤にかけては特に顕著で、雑魚敵一匹を倒すのにも時間がかかり、サクサク進む爽快感があまり感じられません。
敵が「強い(行動が賢い)」のではなく、単に「固い(HPが多い)」だけなので、ボス戦などは戦略を楽しむというより、「ひたすら体力を削り続ける耐久戦」になりがちです。
快適機能として「倍速モード」があるとはいえ、それを常時使うことが前提のような「倍速ありきの調整」になっている点が少し残念でした。


総評・まとめ:現代の技術で甦る理想的なリメイク作品
| ボリューム | 50時間 |
| ストーリー | 4.5 |
| ゲームシステム | 3 |
| グラフィック | 4.5 |
| ゲームBGM・音楽 | 4 |
| キャラクター | 5 |
| おすすめ度 | 4 |
『英雄伝説 空の軌跡 the 1st(リメイク)』は、オリジナル版の持つ温かみや空気感を大切にしながら、現代技術で美しく蘇らせた「理想的なリメイク作品」だと感じました。
フィールドとコマンドバトルの噛み合わせが悪い点や、物語が「序章」で終わるという点には注意が必要ですが、それを補って余りある「圧倒的な世界観の作り込み」と「感動的なストーリー」がここにはあります。
こんな人におすすめ
- 王道の冒険ファンタジーや、ストーリー重視のRPGが好きな人
- アニメ調のグラフィックや、キャラクター同士の掛け合いを楽しみたい人
- 街の住人ひとりひとりの会話が変わるような、細かい世界観の作り込みに感動できる人
- 「軌跡シリーズ」に興味があるけど、どこから始めたらいいか迷っていた人
かつて遊んだファンはもちろん、まだ軌跡シリーズに触れたことがない人にとっても、「RPGの面白さ」を再確認できる一作に仕上がっています。まだの人はぜひ実際にプレイして確かめてみてください。























